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zemroika

ペテルブルクの芸術家たちと、ペトロパヴロフスクのナースチャ


今週末は月に一度のロシア語勉強会を行いました。今回のテーマは『芸術家たちのペテルブルク』!
時間の都合で前置きとゴーゴリについてしか話せませんでしたが、銀の時代の世紀末の雰囲気についてと、ビリービンの絵を紹介できなかったのは少し残念。

ロシアにも西側のヨーロッパにやや遅れて、19世紀末から20世紀初頭にかけ、いわゆる象徴派芸術に代表される、耽美!神秘!退廃!世紀末!な芸術潮流が存在しました。
装飾芸術や舞台芸術に融合する形で、ビリービンのような旧式の絵画の枠を外れた、デザイン性の強い画風の画家が登場しました。

というと小難しいですが、ようするにロシア版アルフォンス・ミュシャです。

ミュシャで見慣れた装飾画のスタイルで、ロシアの民話をモチーフにした絵を見るというのは何とも面白いもので、大分前にペテルブルクの映画館で見た、日本のアニメにものすごく影響を受けた、ものすごく質の悪いロシア製アニメ(ゾンビと化した主人公たちが悪の組織を相手取って戦う戦闘もの)の中で、クレムリンや赤の広場がアニメで描かれているのを見た時もそんな面白さを味わいました(このアニメのタイトルを覚えていないのが非常に悔やまれる)。

そうそう、先日書店でこんないい本も見つけました。カラーの図版が美しいし、日本語でビリービンの解説を詳しく読めるのは貴重だ。
ビリービンとロシア絵本の黄金時代


絵の話をしてそのものを載せないのは気が引けるけど、ネットから拝借してきたものを載せるのもまた気が引けるので、ポストカードと模写を。。。↓


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   ↓ 枠から描きます


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     ここまで描いた!
     


ポストカードというものの、ほんとの葉書ではなくて、裏には絵の場面の説明や台詞が書かれている。36枚綴りで、うるわしのワシリーサ、イワン・ツァレーヴィチと火の鳥、カエルの王女などの民話の紹介がされている。

これは一時期日本で親しんだロシア人の友人からもらったものだ。彼女はビルという名前の一回り年上のアメリカ人の彼氏と暮らしていて、このポストカードセットも、CNN?とか(これも覚えていないのが悔やまれる)、いかにもアメリカンなロゴや星マークがいっぱい描かれた袋に入れて渡されて、東京の片隅に暮らす、ロシア人とアメリカ人のカップルの日常の一端に触れるのは、何とも面白いものだなと思った。
忙しさに紛れてなかなか連絡が取れずにいて、久々にメールをしたら、生まれ故郷のカムチャツカで息子を産んだという返事が返ってきたけれど、思えばそれもほとんど一年前の話になる。元気だろうか。



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  1. 2015/01/18(日) 21:42:05|
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一世紀より長い一日



あけましておめでとうございます。

И полусонным стрелкам лень
Bорочаться на циферблате,
И дольше века длится день
И не кончается объятье.








そして眠たげな時計の針たちは
文字盤を回るのさえもの憂く
一日は一世紀よりも長くつづき
抱擁は終わらない

(ボリス・パステルナーク「二度とない日々」)



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よい年だった2014年はパステルナークの詩の明るい自然と生命の光でよりいっそう照らされた気がします。上に載せた詩は、大晦日の夜に再読し終えた前木祥子先生の『人と思想 パステルナーク』(清水書院)の最終章より。大晦日から元日に味わうのにふさわしい詩のような気もする。


  1. 2015/01/01(木) 23:05:37|
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プーシキン/『エヴゲニー・オネーギン』あらすじ



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 叔父の遺産を継ぎペテルブルクの社交界で華やかな生活を送っていた青年オネーギンは、田舎の村で美しい姉妹と出会う。読書家で空想好きな姉のタチヤーナから愛の手紙を受け取るが、これを冷たく拒絶する。一方妹オリガにはオネーギンの友人でもあるレンスキーという婚約者がいたが、舞踏会でオネーギンが冗談半分にオリガを誘惑したことから決闘となり、オネーギンはレンスキーを射殺してしまう。
 姉妹の前から姿を消したオネーギンだったが、数年後再び社交界に戻った時に目にしたのは、見違えるほど美しくなり人の妻となったタチヤーナだった……。

*チャイコフスキーの同名のオペラがあり、今でもロシアの劇場で演じられる人気の演目です。
*YouTubeに1958年ソ連制作のオペラ映画が全編アップされています。
Евгений Онегин / опера

この作品は”роман в стихах”(直訳:詩の中の長編小説)という形式の作品で、さらに天才詩人プーシキンはこの作品のために「オネーギン詩連」という独特の韻文のスタイルを生み出し、全編にわたって綿密にその形式を貫いています。

……というようなことをこれからロシア語勉強会でお話しようと思います!



  1. 2014/12/20(土) 10:11:47|
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本と詩と週末


書店でお客様のロシア旅行記を発見。

『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』  山口ミルコ 著 

結局私が直接お手伝いできたわけではなく、まずはおすすめしたパッケージツアーを利用していただいたと記憶しているけれど、私のことを少しだけ書いてくださっていた。
「ミルコという名前は父がロシア語から付けた」と聞いて、お父様は学者か芸術家なのだろうか、とその時は思ったけれど、御著書によると総合商社でロシアと木材の取引をされていたのだそうだ。

「ミール」は宇宙ステーションの名前として日本人にも聞き覚えのある単語だと思う。意味は「平和」。と同時に、「世界(社会)」という意味もある。
トルストイの『戦争と平和』は、『戦争と社会』と訳すのが正しいのではないか、という人もいて、「社会」で訳した日本語訳も実際にある。本国ロシアの学校でも、社会と訳すのが相応しい、と教える先生もいるそうだ。

ただし結論として正しいのは「平和」。このことは下のような論理で説明できる。

・二つの単語は同音異義語だが、それぞれ別の言葉。形容詞にすると、「平和な」は「ミールヌィ」、「世界の/社会の」は「ミロヴォイ」。
・革命前のロシア語の「イ」の綴りには二通りあり、「平和」は"миръ"「世界/社会」は"мiръ"と綴った。
・出版当時の本の表紙には"Война и миръ"(=『戦争と平和』)と印刷されていた。

(女性の名前にするのであれば、「平和」でしょうね!)
(余談だけど、日本語を話すロシア女性と話していて、スヴェトラーナさんは日本語にすると明子さんですね、と言われて面食らったことがある。それじゃリュボーフィは愛子でヴェーラは信子か・・・となんとなく呆然とした)


人が旅する理由はさまざまで、(いえ、こう書いてしまえば当たり前のことなんですが、)それを再確認できたいい機会でした。


*****


ところでパステルナークの詩を読んでいます。長編小説『ドクトル・ジヴァゴ』の作者。
月に1回のロシア語勉強会で扱いたいと思っています。
ロシア語のアルファベットが読めて、単語をいくつか知っている、くらいであれば参加できるかと思います。初級の勉強会です。東京にお住まいで興味を持たれた方お気軽にご連絡くださいませ。

   
  わたしは庭のように詩をこしらえたい
  そのとき詩の中で
  菩提樹は葉脈までもふるわせ
  うなじを揃えて花咲くだろう

  (ボリス・パステルナーク「すべてにおいてわたしは至りつきたい」 工藤正広 訳)




(※↑なんか盛り上がっていた時に作った壁紙withパステルナーク。アイコンがもうものすごく見づらくなって使うのはやめた。)

  1. 2014/12/13(土) 22:54:43|
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ICELAND





アイスランドへ行ってきました。


海外旅行ブログのようになってきていますが、そういうわけではなく、先日マリーナ・ツヴェターエワをとっても綺麗でかわいい女優さんが演じている映画(※1)を観て、ツヴェターエワの分厚い伝記書(※2)を図書館で借り、この詩人のことを話したいと思っているものの、伝記はあんまり重すぎて旅行に持って行くのを断念、そこで中断したままのため、彼女のことを勉強しているあいだ、別のことを書いておきたいなと。

※1 "Зеркала. Марина Цветаева."
※2  前田和泉著 『マリーナ・ツヴェターエワ』。 前田先生はアルセーニー・タルコフスキーの詩集を翻訳出版された時のイベントでお見かけしたことがある。この伝記は巨大な仕事だ。


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何年か前、お世話になったギャラリーのオーナーの女性に聞いた話で、「アイスランドはとても自国語を大事にしているらしくて、外来語が全然ないらしく、例えばコンピューターなんかも、何やったっけなあ……すみません、正確には覚えてないのですけど、計算をするもの、みたいなアイスランド語の語彙から名づけられてるんですって」というものがあった。

その時も興味は持ったけれど、でも私はただのロシア屋さんだしアイスランドやアイスランド語に触れる機会なんてこの先もないだろうなあ、なんて思っていた。わからないものです。火山と氷河の国アイスランドは意外に近く、荒涼とした自然と洗練の極みの美しい首都を持つ、蛇口をひねると温泉の出る(これは冗談でなく本当)、とても素敵な国でした。



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↑アイスランド語に翻訳されたロシア文学をちょっと探してみたものの、見つけられたのはナボコフの『ロリータ』だけでした。でもこれ、十中八九英語から訳してあるんだろうな……(ナボコフは英露バイリンガルで、『ロリータ』はアメリカ在住中に英語で執筆、のちに本人がロシア語に翻訳)。
それよりも驚くべきことは、人口わずか30万人の国で、アイスランド語話者も30万人のなか、3階建ての本屋がアイスランド語の美しい新品本でぎっしり埋まっていることなんだよな。

  1. 2014/11/26(水) 00:58:24|
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